interview

interviewについて
  • no.1
  • テクニシャン
  • 小川智彦
  • 1971年北海道旭川生まれ。アーティストとして作品の制作/発表/ワークショップなどの活動と平行し、2007年前後より展覧会やアートプロジェクトのテクニシャンとしての業務も開始する。テクニシャンとして制作に携わった展覧会は「赤坂アートフラワー08」「別府現代芸術フェスティバル混浴温泉世界2009/2012」など。現在は「札幌国際芸術祭2014」の展覧会部門のテクニカルを担当する。http://ogawa-tomohiko.com/

作品制作の勘所を読み解く

 2008年に開催されたAkasaka Art Flower 08 の設営で、キュレーター窪田研二の紹介により、はじめて現場を共にした、テクニシャンの小川智彦さん。第一印象は「すごい人がいるなぁ!」でした。十勝千年の森や混浴温泉世界など、大きなアートプロジェクトの設営を取り仕切ったり、木工のスキルもすごい。いつかまた一緒に仕事をしたいと思っている人です。札幌を拠点に活動する小川さんに、どんなきっかけでテクニシャンの仕事を始めたのか、実際の現場の例などを通じて、実際の仕事内容について、詳しくお話いただきました。

バランスのよい設営サポートで、よりよい作品になる

——小川さんが手がけるテクニシャンの仕事について教えてください。

 混浴温泉世界を例にご説明しますと、ディレクターがアーティストを選定した後、僕とアーティストが直に話を始めます。最初はアーティストからドリームプランが出され、費用を試算して、予算オーバーなら僕の方でオルタナティブな解決方法を探して提案したりしながら、アーティストと一緒に実際につくるものを決定します。その傍らで工務店や電気屋さんに依頼するための指示書をつくったり、必要な資材・機材を揃え、最終的には自分たちで壁を建てたり、塗装までおこなって作品の完成を手助けします。単なる大工仕事ではなく、「作品をつくる仕事ですね。

古い町屋での展示の準備。作家のリクエストに応え、2階の床を抜き、手すりをつけているところ。小川さんは奥、手前は伊藤存さん。

——こうした仕事をはじめたきっかけはなんですか?

もともと大学では彫刻を学んでいました。プログラミングなどが必要な電子機器を扱わないテクニシャンには、彫刻出身の人が多いんですね。それは、立体物や工作機械の取り扱いに抵抗がないからだと思います。はじめは自分で企画した展覧会の設営を自分でやったりしているうちに、地元のNPO S-AIRから声がかかって設営の手伝いをやっていました。2007年に十勝千年の森というエコパークのようなものができるのですが、そこに国際芸術祭のデメーテルでつくった作品の収蔵が決まり、その関係でデメーテルの出品作家でもあるサミ・リンターラが十勝千年の森に新作をつくることになり、札幌で設営が出来る人を探したんですね。その仕事に関わらせてもらったことが大きかったです。その後、デメーテルをマネジメントしていたp3 art and environmentから、混浴温泉世界などの仕事を、継続して頂くようになりました。

——小川さんの得意な分野などはあります

 僕の場合、何かが飛び抜けているというより、総合力なんだろうと自覚しています。東京都現代美術館や金沢21世紀美術館でやるような展覧会は僕にはできません。ただ、公共空間を使用したりするアートプロジェクトの現場で、予算の制約が大きい場合などには向いていると思います。予算はないけれども、いいものをつくらなくてはいけないっていう時に、何かありものを組み合わせたりして組み立てる力はあるんだけれども、でもやはり、本当に国際的に活躍しているアーティストのスタジオで働いている人と比べると、専門の知識は足りていないなと思っています。
 海外だと若いアーティストが食いぶちを稼ぐためにテクニシャンをやることが多いようで、そういう状況もあってか、僕がアーティストだと分かると、海外アーティストは特に安心してくれますね。細かい所を伝えなくても勘所を分かってもらえるという安心感だと思います。

右/音を使用する作品の準備。単体で用意したスピーカーの配線と出力のチェックをしているところ。
左/2Dの建築図面を基に、工務店に見積もり依頼するための3Dドローイングをスケッチアップで制作しているところ。

——テクニシャンの仕事をするために取得しているとよい資格、身につけておきたい能力などはありますか?

 美術館の設営などでも使用する、高所作業車運転者の資格は比較的簡単に取得することができますので、あった方がいいです。作業床の高さが2m以上10m未満の作業車を使用するときに必要な資格です。また、僕も持っていないのですが、電気工事士を持っていると、かなりいいと思います。ひっぱりだこになるのでは。
 実務面で言うと、建築図面を読み書きする能力は必須です。読めるだけではなく、図面から必要な部材の数量を割り出して発注できることが必要とされます。僕の場合は造園設計会社に務めていた際に、自分でキャドを使用して書いた図面から、必要な土の量やアスファルトの面積を割り出す作業をしていて、そこでこの技を身につけました。テクニシャンに興味がある人は、とにかく現場に飛び込んで技術を身につけるといいと思います。

——専門技術を身につけたテクニシャンの存在は、アーティストにとってもアートマネジメントをする人にとっても、心強い存在だと思います。

 最近は、テクニシャン自体が必要悪であるかもしれない、テクニシャンがいることで作家から実際に作品をつくる機会を取り上げているかもしれないということを考えます。作品制作というのは、決まったゴールがあって、そこに突き進むものでもないと思うんですね。制作の途中で気がついたことを作品に盛り込んだり、制作途中で次の作品の着想を得たりするということも、当然のようにあるわけです。テクニシャンの存在は、作家や作品が育つ機会を奪い、作品の大量生産することに加担しているかもしれない。いまはアートが産業化していますけれど、アートの存在意義は産業化ではないはずだったのに、と、自分でやりながらも悶々として悩むことがあります。展示の手助けをすることが役割なので、あまり出しゃばりすぎてはいけないなと思っています。
Text:友川綾子

通りに面したギャラリーの大きな窓を塞ぎ、またガラス越しに覗けるスリット入りのパネルを現地で制作しているところ。

小川さんへのお仕事のご依頼はこちらから→http://ogawa-tomohiko.com

展覧会設営をするときに使える
関数電卓をつかってみよう

ルート計算など、数式計算をすることができる電卓。
壁面に平面作品を均等配列で配置するときの幅を一気に計算できる。

スケッチアップをつかってみよう

Googleから提供されている無料3D制作用ソフト。ギャラリーの立体パースをおこすことができるので、データ場で設営前のシュミレーションをすることができる。http://www.sketchup.com/ja

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